2008年5月27日火曜日

市川隆先生の特別講演会

今日は東北工学教育協会の特別講演として、
東北大学大学院理学研究科の市川隆教授が
「もとづくりと天文学ー先端技術で探る果ての宇宙ー」
という題目で講演をして下さいました。

先生は観測天文学がご専門で、
特に遠方の銀河からの赤外線を観測することによって、
宇宙の始まり、進化を解明しようという研究をなさっています。

ハワイのすばる望遠鏡の観測装置の開発にも携わったことがあり、
当時世界最高性能の
多天体近赤外撮像分光装置(
MOIRCS)を
大学院生と共に開発されました。

今日はその
MOIRCSが完成するまでの経緯や、
現在計画中の南極への望遠鏡建設計画
などについてお話ししてくださいました。


MOIRCSの完成に至る過程で重要なのは、
ゼロから大学院生たちが作り上げたということです。
以前から先生が学生への教育において危惧なされていたのが、
学生の「ものづくり離れ」でした。

東北大学に赴任された頃は、
天文学教室の学部生に対するカリキュラムの中には
実験は盛り込まれておらず、
もちろん実験室というものも無かったそうです。

そのため先生は担当する学部2年の授業の内容をガラリと変えて、
ハンダごてを使ったアンプの製作を導入なさったそうです。

そして学部3年で自分の作った装置を
実際に望遠鏡に取り付けて観測を行うということを始められました。

大学院生に対しては、
実際に研究を行うという責任感と意欲を持たせるために、
すばる望遠鏡という最高の環境の中で
観測装置の開発に参加させたということでした。

実際に自分で作った装置で観測を行うことによって、
論文を書くだけでは得られないものを得ることができるというものでした。

「ものづくり」を通して「人を育てる」というスタンスが、
学生の教育に結びつき、さらに、
世界最高性能の観測装置を完成させることができたということは
とても素晴らしいことだと思います。


先生は今後、南極に望遠鏡を作ろうとなさっています。

MOIRCSは仕様が公開され共同利用が始まったため、
先生でも
MOIRCSを利用できるのは多くても年に7日間程度だそうです。

先生が観測したい遠方の広域の宇宙を観測するにはそれだけでは足りず、
もっと自由に観測できる環境ということで、
低温のために赤外線雑音が少ない南極が
もっとも適しているということでした。

南極では望遠鏡の規模がすばるの10分の1でいいということで、
望遠鏡から手作りをするということです。
これは現在進行中のプロジェクトなので、
今後の進展に注目したいと思います。


今回の講演は主に教員向けだったように思いますが、
学部生の私が聞いても、
天文学というスケールの大きさや、
学生の力によって完成された世界最高性能の装置など、
非常にワクワクするような内容で、
最後まで聞き入ってしまいました。

私もこれからの卒業研究や大学院での研究において、
人として育ち、また、
大きな達成感を味わえるように、
意欲や責任をもって取り組みたいと思います。

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